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10月に新しい政権が発足し、足元の経営環境は一段と厳しさを増しました。これまでの「コストアップインフレ」と「賃金上昇圧力」に加え、もう一段の「金利高」も本格的に織り込まなければならなくなりました。

現政権の経済政策は、積極財政とインフレ容認の組み合わせによる「高圧経済」と言われています。平たく言えば、「財政を拡大して、多少インフレと金利が上がっても経済を押し上げよう」というスタンスです。

ただし、その積極財政が本当に実を結び、民間企業の国際競争力とシェアと利益率(=潜在成長率)を押し上がるかどうかは現時点では賭けです。しかもそのハードルは高くリスキーだと私は考えています。結果が見えるまでは何かにつけ「財政悪化への懸念」と「インフレ」 → 「金利上昇圧力」がのしかかってくると考えた方が自然です。

もし日銀が利上げをためらえば円安・物価高が進みその結果政権支持率が下がる。それを避けるためには、金利を“それなりに高い水準”まで引き上げざるを得ない。つまり、この政策が続く限り「金利とインフレは上がることはあっても、元の低水準には戻りにくい」と腹を括ったほうが無難だと考えます。

では、中小企業の社長はどう動くべきか。細部は業種・会社によって異なりますが、私は大きく次の三つの方向がヒントになると考えています。

① 物価高への対応:価格転嫁の「限界」を見極めて「お得感」を出す
持続的な物価高に対して価格転嫁を行う場合、ターゲット顧客の可処分所得を冷静に見ることが大切です。
それを超える価格転嫁はいずれ受け入れられなくなります。その「許容範囲」の中で、品質・利便性の向上、コスト削減など、不断の経営努力で商品・サービスの競争力を高めながらお得感を出すことが重要です。

② 賃上げ圧力への対応:教育×AIで労働生産性を上げる
賃上げ圧力については、王道は社員教育の強化による労働生産性の向上です。同時に、私は「AI活用を本気で考える段階に入った」と見ています。他社に先んじてAIエージェントを導入し、事務・定型業務の自動化、営業・マーケ・分析業務の高度化を進めることで、総人件費あたりのアウトプットが引きあがると同時に人手不足対策にもなります。

③ 金利高への対応:資産の棚卸による余剰資金捻出と借入金圧縮
金利高に対してまずやるべきは、貸借対照表の見直しです。必要以上に高積みしている現金預金や不要な遊休資産の売却で得た資金を借入返済に回すことです。

例えば精査の結果、5,000万円の余剰資金が捻出できたとします。平均支払利息率が3%なら、年間150万円を余計に銀行に支払っている計算です。このコストを削減し、その分を賃上げや教育・AI投資に回せば、社員の不満解消と生産性向上の両方に使えます。

ただし、いきなり固定給を大きく上げるのはリスクもあります。私としては、まずは「頑張った人が報われる賞与」で是正することをお勧めします。その上で、中長期的に人事給与制度の見直しを進めるのが現実的な順番です。

以上、これら3つを軸に経営の再構築を検討すれば、高圧経済・金利高の時代における生き残り策と、ピンチをチャンスに変える現実的な戦略が見えてくるでしょう。