皆さんこんにちは!
経営改革コンサルタントの李です。

先日、豊後富士と呼ばれている由布岳(東峰1580m)に登ってきました。
頂上はガスと風吹でしたが、途中雄大な景色を楽しむことができました。

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今回は最近話題の「職務給とジョブ型雇用」についてお伝えします。
 

職務給+ジョブ型雇用」とは、早い話が「この仕事をこれだけすればこれだけ払います」という人事給与制度で、基本的に「労働生産性」に応じて給与と役職が決まる仕組みです。
 

仕事ありき」で人事(採用・配置・育成)が行われるため、人的資本の効率と新陳代謝が促進され総じて実力に見合った給与と役職に落ち着きます。
 

何をどれだけすれば昇格昇給できるのか明瞭な為、従業員にとってはキャリアプランを立てやすく中長期的なモチベーション要因になります。
 

逆もしかりで何がどれだけできなければ降格減給になるのかも明確な為、従業員にとっては心の安定感が減少する半面、自らの市場価値を高める努力と自立心が促されると同時にフェアで透明性が高い社風が形成されます。
 

要は制度によって信賞必罰が明確化されているイメージです。
 

役員も従業員も結果が求められるため、個人の目標達成意識と労働生産性の水準は必然的に高まる傾向になります。
 

実力と頑張りが報われる制度なので、労働市場が流動化するほど若くて優秀で自立した人材を集めやすくなります。
 

フラット型組織と相性が良い為、役員も社員もそれぞれの職務を遂行しつつ連携してチームプレーを行うようなフェアで風通しの良い社風と組み合わせると効果が高くなります。
 

またKPI(重要業績指標)を評価基準に落とし込んでいくため、科学的な経営管理手法を導入することで利益アップと給与アップの相乗効果が期待できます。
 

但し、これまで以上に経営者の決断力と専門性が求められます。
 
 

一方、皆さんおなじみの日本的経営の象徴ともいえる「年功給(≒職能給)+終身雇用」は、基本的に「年齢と勤続年数」に応じて給与と役職が決まる制度で「労働時間」に応じて給与が支払われます。
 

雇用ありき」で人事が行われるため人的資本の非効率が正されず新陳代謝が低下し、結果中高年を中心に実力(生産性)に見合わない給与及び役職の問題が構造的に発生します。
 

雇用が終身確保されて給与と役職は基本的に下がることなく、時間の経過と共にある程度までは段階的に上がり続けるため社員にとっては心の安定感がある一方、依存心(=帰属意識と権利意識)が高まり自らの市場価値を高める意識と自立心は低くなります。
 

何をどれだけすれば昇格昇給できるのか不明瞭で、結局はエレベーターの順番を黙って待つか社長や上司に気に入られる方が早いため人事が恣意的になりやすく、また社長の性格や人望の有無によっては信賞必罰のないぬるま湯になりかねず、往々にして長期的に組織が弱体化する要因になります。
 

また、インセンティブとして業績手当を設けたり営業職に歩合給を設けているケースはあっても、KPI(重要業績指標)とベースの給与と役職が制度ととして明確にリンクされていないので(特に役員と間接部門及び技術部門)、目標達成意識と労働生産性向上に対する中長期的なモチベーション要因とはならず低水準に留まる傾向になります。
 

給与は青年時に安く中高年になるほど高くなり退職金で帳尻を合わせる制度設計になっているため、(40歳も過ぎれば)目標達成や労働生産性を向上させる意識よりもいかに無難に過ごして退職金をもらうかという意識を高めかねません。
 

「頑張っても頑張らなくても大して変わらないから必要以上に頑張る必要はない」という考え方がサラリーマンの暗黙の了解になる所以です。
 

根底にあるのは給与=「生活給」の考え方であり、会社は社員とその家族を終身面倒を見る義務があり労働者にはその権利があるという価値観に基づいています。
 

この制度は総じて貧しくモノ不足で価値観が均一化していた高度成長期の工場経営といった右肩上がりの成長と集団主義的な環境では機能しますが、利益が成長しなくなると年々高くなる人件費負担が問題になり、更に価値観の多様化と個の尊重が進むほど制度が機能不全に陥りやすくなります。
 

加えて少子高齢化で社員の年齢構成が逆三角形化すると、構成比率の高い中高年社員が体力曲線の低下に応じて労働生産性も低下するのとは逆に人件費の負担は高まり労務倒産リスクを加速させます。
実際多くの中小企業がこの問題に悩まされています。
 

給料と役職が実力(生産性)ではなく年齢と勤続年数で決まる為、労働市場が流動化するほど若くて優秀な人材の採用が難しくなるばかりか、逆に若く優秀で自立した人材から去っていくリスクが高まります。
 

社長、専務、常務、部長、次長、課長、係長、主任、平社員と言ったピラミッド型組織と相性がよく、上に行くほど労働生産性や専門性よりも愛社精神と忠義が求められ経営判断の基準は結果ではなく権威が重視されます。
 
 

以上、両者を比較しながら要点を簡潔にまとめましたがいかがでしょうか。
 

経営資源の効率性と生産性向上の観点から見た場合、職務給+ジョブ型雇用が圧倒的に優れています。
 

また、経済のグローバル化と情報技術の進化に伴い環境適応力と競争力が一層求められる昨今の経営環境に適した制度です。
 

しかし、現在における日本人の経営観や労働観に照らし合わせた場合、総じていえば年功給(≒職能給)+終身雇用の方がなじみます。
 

その傾向は中高年層において顕著で新な人事給与制度を導入する際の大きな障害となり、現行の人事給与制度の問題は分かっていながらもどうすればよいか分からず問題を先送りし続けているケースが多く見受けられます。
 

✓ 後から入社した社員の給与や役職の方が高くなれば社内がギスギスしないか?

✓ 新しい制度に変えた時に給与が下がる社員の問題はどうすればいいのか?

✓ 制度が変わると社内が混乱して退職者が続出しないか?

✓ 社長自身や役員の報酬はどうなるのか?

✓ 本当に生産性が上がるのか?
 

こうした不安と問題を3年から5年かけて段階的に解決しながら収益性と生産性を向上させつつ社風を変える指導を私は15年前から行っています。
 

当時はジョブ型雇用という言葉さえない時代で、職務給という言葉は専門用語としてありましたが、それを実用化して中小企業に導入していたのは知る限り私くらいでした。
 

当時、私はすでに身に着けていた一年で営業利益をV字回復させる技術を用いて赤字企業の黒字化と人財教育を行っていましたが、やがて団塊世代の社長たちの引退時期が本格化するにつれて世代交代が進み次第に事業承継と後継者教育に関する支援の要望が増えていきました。
 

そこでこれまで培ってきた短期で成果を出すノウハウをバージョンアップさせ、中長期的に会社を持続的に発展させると共に本物の経営者を育てることができる経営改革メソッドの開発に取り組みました。
 

・職能資格制度(≒年功給)と終身雇用のままでは収益性と生産性の改善に限界がある。

・会社は社員を守って社員は守られて骨を埋めるまで勤めあげる・・・このような意識と依存関係ではこれからの時代においては双方の中長期的な発展はありえない。

・とはいえ歩合給や欧米型成果主義では個人主義やセクショナリズムの弊害で強みである組織力が失われる。

・利益アップと給与アップというWin-Winな関係を長期にわたって実現するためには役員を含む全社員の成長(=労働生産性の向上)が欠かせない。

・人財教育は必須だがそれだけでは足りない。

・根底にある制度から変わらなければ習慣化されず永続的発展はむつかしい。

・とはいえ現状ではいきなり実力主義(生産性ベース)の人事評価制度を導入するのは難しく段階を経る必要がある。
 

指導の現場でこのように痛感し、その問題を解決すべく試行錯誤を重ね開発したのが弊社の独自開発メソッド「経営改革の方程式」であり、その内の一つがご説明してきた「実力主義の人事給与制度」(=V字回復コンサルティング(株)版の職務給+ジョブ型雇用)です。
 
 

最後にワンポイントアドバイスです。
 

職務給とジョブ型雇用はそもそも欧米が発祥です。歴史も文化も違う欧米型の物をそのまま導入すると20年前の成果主義ブームの時のように失敗します。日本の文化と長所を生かした職務給+ジョブ型雇用を構築することが大切です。
 


なお、お伝えした内容はこれまでの指導経験に基づく私の考察であり、部分的にアカデミックな定義とは異なる可能性がある事と、外資系のそれとは似て非なるものである事を合わせてお伝えしておきます。
 

このブログを読まれて「実力主義の人事給与制度」へのご質問やご関心がある方、または現行の人事給与制度の問題にお悩みの方がいらっしゃれば遠慮なくお問合せください。
 

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