前回に引き続き、アフターコロナの世界と中小企業が進むべき方向性についてお話します。
コロナは人々の意識を大きく変えました。
一つは、人との密な接触を極力避けようとする意識。
ウィズコロナの到来はソーシャルディスタンスという新たな常識をもたらしました。
そして、その社会的距離を埋めたのがインターネットです。
多岐にわたってオンライン化が進み生活様式と働き方が大きく変わっています。
オンライン会議、オンライン販売、オンライン教育、オンライン診療・・・。
オンラインショッピング、オンラインデリバリー、オンライン女子会&飲み会・・・。
不要不急の外出自粛とリモート勤務を経て見えた事。
それは、自宅にいながらオンラインで済ますことができる利便性と新たな可能性の発見。
対面が当たり前だったこれまでの常識の多くが覆っています。
最も保守的なあの行政すら対面主義を改めようとしています。
コロナ禍を機に情報化社会とデジタル経済へのシフトが急速に進んでいます。
こうした変化を受けて変わらざるを得なくなったのが中小企業の社長の意識です。
不測の事態で売上がゼロになろうが支払い続けなければならない地代家賃、人件費、借入金返済。
経営リスクとは何なのかが身に染みて分かったと思います。
実際、とある社員20名のシステム会社リモート勤務を始めてから事務所を解約したそうです。
代わりにシェアオフィスとスポット契約を結び、今後は週一回だけ集合勤務を行うとのことでした。
こうすることで、生産性は変わらないまま地代家賃がほとんどかからなくなります。
しかも、交通費支給額も大幅に削減され水道光熱費に関してはゼロ。
シェアリングエコノミーの時代、ジャストインタイムの考え方で少し知恵を出せば、地代家賃という固定費すら変動費化して大幅に削減することができる訳です。
一方、社員にとってもリモート勤務は都合がよい。
満員電車に乗らずに済むし、渋滞にも巻き込まれず時間の有効活用ができるからです。
その気になればネットで副業も可能(バレない)になる為、収入源を増やすこともできます。
安定収入を確保しながら複数の収入源を模索するのは人間の根源的欲求であり誰にも止めることはできません。
会社の給与制度に縛られることなく、自分の頑張り次第で自由に稼ぐことができる時代になったのです。
こうしたホワイトカラーにおける変革の波が都心から地方へと断続的に波及すれば雇用形態の多様化が進むでしょう。
これまでのような正社員だけでなく、半日勤務、曜日指定勤務、隔週勤務、勤務地限定、フルコミッション、副業解禁、二股三股での会社勤務といった多様な働き方と稼ぎ方が常識化し、会社においてはこうしたニーズに対応できる制度作りと環境整備が求められるでしょう。
やがてスキルの高い者から次第にフリーランスが増加する一方で正社員人口が減少し、雇用契約から業務委託契約へのシフトがゆっくりと進むと考えられます。
実はこうした流れは会社にとってもウェルカムです。
何故なら、業務委託契約であれば管理や育成をする必要がなく、仕事のクオリティーとコストを容赦なく求めることができるうえ、満足できなければ契約を更新しなければよいので収益性と生産性が高まると同時に経営リスクも低下するからです。
しかも、年々増額する社会保険料と雇用保険と言ったコストの負担も削減できます。
更には給与計算や社会保険業務といった労力も減るので総務経理の縮小や外注化も可能になります。
これ、即ち人件費の変動費化と削減です。
注意しなければならないのは、旧態依然としたままの会社にとってはこの流れは脅威になります。
時代のニーズにそぐわない会社は採用難に陥ると同時に社員が高齢化して生産性が下がる一方、年功序列型の給与制度により人件費が膨らみ利益が圧迫するからです。
また、人は高齢化するほど変化を恐れる傾向がある為生活保障要求と権利主張が高くなり、社員の平均年齢が高まれば高まるほど人事給与制度改革や組織変革といった経営改革が困難になるからです。
もう一つ、誤解してはならないのは全ての業務を外注化するのが得策ということではありません。
コアコンピタンス(中核となる強み)に関する高い技術を保有する者や営業の要となる者、マネジメントを司る者は社員でなければなりません。
この者たちこそ会社組織を支える人財であり、よって人財教育の必要性が高まることはあってもなくなることはない。
必要なくなってきているのは、全体主義に基づく古い価値観教育です。
これからの時代を担う若者たちに、御輿を担いで会社に骨を埋める意識を持ち合わせる者などいないでしょう。
また、俗にいう中間管理職の為の管理者教育も必要なくなっていきます。
年功型のピラミッド組織から職務型のフラット組織に移行せざるを得なくなる中で、取りまとめと上下間のすり合わせしかやらない中間管理職など必要なくなるからです。
こうなるととても従来の評価制度では対応できません。
年功主義に基づいた年齢や勤務年数、集団主義に基づいた勤務態度や情意など、仕事の品質や成果とは直接結びつかない評価項目は益々不要になるでしょう。
多様な価値観と個性にあったフレキシブルな雇用形態と頑張った分報われる人事給与制度が求められています。
これが、前回のブログで書いた「雇用形態の多様化と実力主義の人事給与制度」の根拠です。
これだけではありません。
コロナとは別に大きな変化が控えています。
それは労働人口の減少です。
今後、日本の労働人口が急減することが確実な中、必ず大量の外国人労働者の受け入れが必要になる時期が来ます。
すると、これまで良しとしていた日本固有の価値観に基づく日本的同族経営、日本型雇用システム、日本型人事給与制度など、好む好まざるに関わらずいずれ根底から変わらざるを得なくなります。
コロナ禍をチャンスと捉えて経営改革を断行すれば、会社は収益性と生産性が向上して経営リスクも低下し、労働者は自主自立して自分にあった働き方と稼ぎ方が実現し、結果として日本経済における労働市場の流動化が促進され、会社も労働者も日本経済も元気になるでしょう。
さて、ここで三つ目の経営リスクである借入金返済について考えてみます。
(次回に続く)
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新しい時代にマッチした雇用制度と実力主義の人事給与制度について関心のある方は下記の記事も併せてご覧ください。
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