皆さんこんにちは!
V字回復コンサルタントの李です。
本日は、事業承継と後継者教育に関連するコラムをお届けします。
タイトルは、
「ロッテと大塚家具のお家騒動に思う~創業家は家業商売をせずに企業経営をしろ~」
です。
今年初めに世間を賑やかせた大塚家具のお家騒動のほとぼりが冷めたと思いきや、今度はロッテのお家騒動が、世間の茶の間を賑やかせています。
経営権を巡り創業家の親子が周囲を巻き込み見苦しい争いをメディアの前で繰り広げる・・・。
本人たちは、頭に血が上って周囲が見えていないのかもしれませんが、私からすれば「みっともない」の一言に尽きます。
経営コンサルタントという職業柄、会社の内側をよく知るだけに、この手のドタバタ劇を見るとまたかと余計に嫌気がさしてくるのです。
というのも、創業家が私利私欲に駆られて骨肉の争いを行えば、社員もお客様も白けて業績が落ち込むからです。
事実、客離れが続く大塚家具が先週木曜日(8月6日)に発表した1~6月の当期利益は、前年同期比52%減の3億5900万円でした。
この責任の所在はどこにあるのか。
言わずもがな、公衆の面前で大喧嘩を繰り返している親子です。
しかし、当事者たちは経営責任を取ることなく相変わらず社長の椅子に固執している。
これが、なおさら「人」としてみっともないのです。
大塚家具やロッテの内部事情は知りませんが、私の過去の経験からして、経営トップが自らにけじめをつけることができない会社に信賞必罰はなくその社風は総じて甘い。
すると、数字と仕事に甘くなるだけでなく誰も責任を取ろうとしなくなり、問題のたらいまわしが日常化して組織が内部から腐っていくのです。
間違った指示に対して正しいことを言う者ははじき出され、給料欲しさに黙って言うことを聞く者だけが残っていく。
するとどうなるか。
ますます、業績が悪化するのです。
「家業商売を止めて企業経営をしろ。」
これが、私が一番言いたいことです。
「商売」に精を出して売上高を大きくするのは結構だが、いつまでも創業家が「家業」をやっているからこのような事になるのです。
要するに、事業規模が300億円あろうが数兆円あろうが上場していようが、中身の経営は、親子でやっている八百屋と変わらないということです。
「血の継承は組織の弱体化を招く。」
21世紀というこの変化の時代に、資本主義社会における株主会社が、いつまでも徳川幕府のような前近代的な企業統治はやめることです。
家業商売をやめて企業経営を行う為には、取りも直さず「所有と経営の分離」を行う事です。
これは、株式会社の基本中の基本です。
つまり、所有権(株式)を親から子へと継承するのは構わないが、経営は実力のある者に任せなさいということです。
例えるなら、ビルのオーナーがテナントを事業主に貸して事業主は利益を上げて家賃を支払うように、会社のオーナー(株主)は実力のある経営者に経営を任せて、経営者は利益を上げて株価を上げる又は配当を支払う。
これが一番効率的なやり方です。
社員が30名を超える会社の創業家は、所有権と経営権の両方を独占しようと思わないことです。
名経営者として世界的にも人気が高い本田宗一郎氏は、自らが引退する際に誰を後継者に選んだか。
次世代エンジン開発の方向性で意見が食い違い、自分に反発して一時会社を飛び出した経緯のある部下を後継者に指名しました。
エンジン開発に絶対の自信があった本田宗一郎ですが、結果的にその部下が正しく技術で自分を超えた部下を素直に認めて後継者に指名したのです。
ここが、本田宗一郎氏の偉いところだと私は思います。
技術の前に社長も部下もなく、正しいか間違っているかしかない。
この基準で経営判断を行うことができる、「度量」があったということでしょう。
経営も同じです。
利益の前に社長も部下もなく、正しいか間違っているかしかありません。
実力主義で最高経営責任者を決める社長人事の刷新。
そして、社長の暴走を制御する取締役の機能強化。
規模の大中小を問わず、これが、いまだ八百屋経営と前近代的な企業統治を続ける多くの(株式会社)社長たちの最大の経営課題だと私は考えています。